前回はオフセット印刷(平版)についての記事を書きましたが、今回はそれ以外の印刷方法について。
前回のおさらいですが、印刷の方法には大きく分けて下記の4種類のいずれかで印刷されています。
①オフセット印刷(平版)
チラシや雑誌、ポスターなどへの印刷
②凸版印刷(凸版)
シールなどへの印刷
③グラビア印刷(凹版)
お菓子などの袋やペットボトルのフィルムなどへの印刷
④シルク印刷(孔版)
一部の道路標識やプラスチック容器など曲面への印刷
今回は②~④について書いてみます。
●凸版印刷(フレキソ印刷など)
「凸」と言う字を書くことからも分かるように版の突出しているところにインクが付いている印刷方法になります。一番分かりやすい例えでは小学生の頃の版がや印鑑(ゴム印)ですね。主な特徴は下記となります。
- ラベルなどのロール印刷に適している。
- コストが比較的安い
- 文字がシャープに出やすい
- 段ボール印刷など、多少凸凹の素材にも印刷可能
- グラデーションや細かな印刷に弱い
それでは版と印刷のしくみを図で表してみましょう!
前回に続き、僕がイラストレーターで描いたものです。
特にフレキソ印刷については、コストや環境の面から欧米では主流になりつつあり、特にパッケージ印刷では多用されています。
ちなみに凸版印刷である事の見分け方は下記となります。印圧により樹脂版が少し広がることによって、外側にフチが出来るんですね。ちなみにこれを「マージナルゾーン」と言います。
●凹版印刷(グラビア印刷など)
「凸版」とは全くの逆で「凹版」は版のくぼみのところにインクが入り、それが紙に転写される方法となります。主な特徴は下記です。
- 版代がかなり高額
- 版の耐久性はあるので、リピート物には適している
- 網の再現性に弱い場合がある
- 印刷時に色調整する事が難しい
- 大量ロットに適している
- エンドレスの絵柄が可能で、つなぎ目が出ない
それでは、こちらも図で表してみましょう!
グラビアの版はとにかく版代が高いですね。だから印刷ロットが多ければ問題ないですが、小ロットの場合には割高になります。また版を「掘る」ので、細かい網が再現しにくいと言われていています。
通常の印刷ではインクの量を調整しながら「インクを盛る」事が出来るので、印刷しながらある程度の色調整が可能ですが、グラビア印刷の場合は溝の深さを変える事が出来ないので、メジウムを混ぜて薄くする事が出来ても、濃くする事は不可となります。
ただ連続した絵柄を、つなぎ目が出ない状態でエンドレスに印刷が出来るのが最大の特徴でしょう。
●孔版(シルク印刷など)
簡単にいうと、メッシュ状の版に孔(あな)が開いてあり、その部分からインクを落として転写する方法です。
主な特徴は下記となります。
- 紙だけではなく、布や金属、プラスチックなどへ印刷が出来る
- 耐久性がある
- インクの乾きが悪いので、1色ずつしか印刷出来ない
- 線数が粗いので、細かな印刷柄には対応出来ない
版のしくみは下図となります。
実は僕が学生時代にアルバイトをしていたのが、まさにシルク印刷の工場でした!
シルク印刷はとにかく耐久性があるので、道路標識などの屋外看板にも使用されています。ただ1色ずつしか刷れないので、大量ロットの場合は納期が掛かります。
●まとめ
今回もかなり簡単に説明しましたので、それぞれの印刷方法の中でも違うやり方があったりします。だから詳しくご存知の方なら
「同じグラビア印刷でも違う方法で版を作ればもっと綺麗に出来る!」
「凸版は樹脂版だけではなく、銅版もある!」
などのご指摘もあるでしょう。
でも、あまり細かく書き過ぎると収拾がつかなくなるので、ごく一般的な技法を書いてみました。ご了承ください。
●余談ですが「紙幣の印刷」について
前回と今回で印刷の主な4つの技法について書いてみましたが、皆さんは「紙幣の印刷」はどの技法が使われていると思いますか?
はい、実は日本の紙幣について言えば、これらの4技法の全てを使用して作られているんです!
「紙」は通常使用しない原料を使うことで破れにくく、独特の風合いを出しています。
「インク」についてもパールインクや蛍光インク、特殊な発光インクも使われているようです。←あまり詳しくしらないですが・・・。
「印刷方法」は上記の通り4技法ですが、主には凹版のようです。以前に聞いた話ですが、職人さんが肖像画を手掘りしていると教えられた事があります。
また虹色に刷られているレインボー印刷も使用されていますね。
「その他」として透かしや目の不自由な方のための識別マーク、ホログラムまで使われています。
この様に我々の日本紙幣は世界一と言われるくらい、印刷技術の結晶なんですね。
ちなみに世界一の偽造紙幣技術を持っているのは北朝鮮らしいです。
(←これこそ余談でした(笑))
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
櫻井 一慶
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