印刷について vol.1

弊社のように販促物を中心に制作している会社では印刷に携わる事がどうしても多くなります。そのため業界のルールや用語の理解はもちろん、ある程度の印刷の知識も必要となります。
こう見えて実は最初に働いた会社が印刷の製版会社でしたので、その時に徹底的に印刷の勉強をさせられました。当時は手作業でしていた色々な事が現在ではデジタル化されていますが、印刷の仕組みが変わった訳ではないので、その当時の知識が今の仕事をする上で大変役に立っています。
備忘録の意味も込めて今回から数回にわたり印刷について書いてみたいと思います。

●以前の印刷ができるまでの工程

「印刷」というと主にチラシや雑誌などの「オフセット印刷」を指す場合が多いのでオフセット印刷が出来るまでの工程をご紹介します。
今ではWindowsやMacでデータを作成し、印刷会社に入稿するという工程は当たり前になっていますが、コンピューター(DTP)が普及する前はほとんどを手作業で行っていました。主な工程は下記でした。

1、デザイナーがスケッチ画を描く
それこそ紙に鉛筆で手書きするようなやり方です。
2、写植屋さんが写植機で文字を印画紙に出力
「写植(しゃしょく)」ってあまり馴染みのない単語だと思いますが、簡単に言うと印刷に使用されていた文字の事です。写植機という特種な機械で文字入力し、限られたスペースにその文字を入れるために文字詰めするなど、組版のスキルが要求されていました。
3、版下屋さんがデザイナーのスケッチ画をもとに写植文字を台紙に貼る
「版下(はんした)」という言葉も馴染みがない言葉だと思いますが、印刷の「版」のもととなる原稿のことです。デザインされたスケッチ画を綺麗に再現する作業ですね。台紙と呼ばれる厚紙へ写植を貼ったり図柄を貼ったり、印刷時に必要なトンボを付ける作業などを行います。
4、デザイナーが版下の上に敷かれたトレペ(薄紙)に色指定を書く
版下は白黒だから実際の色が分からないため、デザイナーがイメージしている色をカラーチャートなどを見ながら、全て指定していました。
5、製版屋さんが印刷用の「版」を作成する
版下を撮影し、色指定をもとにCMYKのフィルムを作成し、それをPS版(印刷用の版)に焼き付けるところまでの刷版工程です。この製版作業はかなり複雑なので、正直なところ言葉では書けないです。
6、印刷屋さんが印刷機で印刷する
この部分は昔も今もほとんど同じ工程です。

上記のように昔は色々な工程がありましたね。それぞれの工程で専門の会社があり、それだけ時間と費用が掛かっていました。またそれぞれに職人さんがいて、熟練の技みたいなものもありました。ちなみに僕が最初に働いた会社が「製版屋さん」でして、当時(20年前)の原稿の90%以上は上記のようなアナログでやり取りしていました。

●現代の印刷ができるまで

現在の工程は下記となります。

1、デザイナーがMacのイラストレーターなどのソフトでデザインし印刷会社へデータ入稿する
以前まではデザインとレイアウトだけしていたデザイナーが、今では文字入力~色付け~組版まで、版下作成から入稿までを行うので、色々な知識が要求されるようになりました。
2、製版会社か印刷会社でPS版を「出力」して印刷
昔のようなフィルムを作成することがなくなり、データから直接刷版できるようになりました。

現代では主にこれだけ簡素化されました!以前のように各専門会社が分業していた作業をパソコンがするようになり本当に便利になりました。そして工程が効率化されたので、時間も短縮されました。また費用についても、工程が減った事により下がってきました。実際その影響を一番受けたのが各工程の専門会社で、今ではほぼ無くなってしまいました。

●印刷業界のこれから

上記の通り色々な物がデジタル化されている現在、印刷業界も例外なく大きく影響を受けており、身近なところでは雑誌の発行部数の減少や廃止など、市場規模は年々減少しています。また環境の問題が言われるようになって企業のペーパーレス化の動きもあり、今後もプラスになっていく事はない斜陽産業と言われています。

パイの小さい仕事量を沢山の会社で取り合う状況が続いていて激しい価格競争が起こっており、どこの印刷会社さんも刷っても全然儲からない悪循環になっています。
そんな中でも儲かっている?のが「ネット印刷」。全国から仕事を受注し、複数のデータを付け合せて印刷することで今までの概念では考えられないコストダウンを実現しています。今後は「品質を重視した従来の印刷会社」と「コストを重視したネット印刷」の2極化の流れは、しばらく続くと思っています。

●まとめ

何か暗い話になってしまいましたね。弊社は印刷会社ではないですが、印刷業界出身の僕としてはプロとしてのポリシーを忘れず品質にこだわりを持った従来の印刷会社に頑張って欲しいと思っています。
それでは次回は実際の印刷について書きたいと思います。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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1972年1月18日生まれ。奈良県在住。大学を卒業後、製版会社、広告代理店を経て父親が設立したダイトー光芸(株)に入社。2013年5月より現職。 恵まれたクライアント様や協力会社様に育てていただきながら、日々奮闘中。

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